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2008/05/02

カポーティの短編。

7s_086

小さい頃自分が寝ていた部屋には、
すすけたような色のカーテンがさがっていた。
白っぽい生地に
抽象的な柄のあるカーテンだったと思うのだが
その頃の自分には、その柄が、
小さな船をこぐ船頭に見えた。

夜、ふとんにもぐりこんで
顔だけをカーテンのかかる戸口のほうへむけると、
薄明るい外のひかりが透けて、
ぼんやりと小船と船頭が浮かんでくる。
船頭は船の後ろ側にたち、
竹竿のようなものを川底にさし、
ゆっくりと船をすすめているように見える。
その船頭をみていると、なんだか
悲しいようなせつないような気分になった。
隣の部屋には両親がいることがわかっているので
恐怖心はうすく、ただ心細さの感覚が、
ひたひたと押し寄せてくるので、
カーテンを見るのをやめて
枕に顔をうずめるのだった。

あの頃の自分はいったいいくつだったのか。
船頭と小船という図の、
こどもが思い浮かべるにしては
やけに地味でそのくせ突拍子もない感じが
記憶そのものもなんだか曖昧にしていくのだが。

カポーテイの短編には、
子供のときの思いでを素材にしたものが多くあり、
それらを読んでいると、
日頃脳の奥底に埋もれているような
自分のちいさい頃の記憶が
ふとよみがえってきたりする。
それは、こども時代の
漠然とした不安感をただよわせつつも、
おとなになって思い出すぶんには、
すこし甘美なニュアンスもあって、
遠い昔の自分に、声をかけてやりたいような
そんな気分もしたりするのだ。

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