犬が星見た-ロシア旅行。
この本を初めて読んだのは20年以上前だ。
初めて読んだときには
武田百合子についての知識があったわけではなく、
「なんとなく」おもしろそうだったから
手に取ってみたのだった。
いま思うと、それは
タイトルに惹かれたからかもしれない。
犬が星見た。
夕暮れ時の空に浮かぶ一番星を
小首をかしげた犬が見上げている、
のかどうかはわからないが、
なんて言うか旅の寂しさや楽しさや
旅というものに付随するさまざまな感情が
にじみ出るようなタイトルだ。
いままでに何度も読み返しているのだけれど
最近またふと目に留まって
再読したのだった。
いつ読んでも面白い本である。
旅そのものは何十年もまえの話だが
武田百合子の、旅の目の新鮮さは古びない、
そして旅の魅力だけでなく
一緒に旅行した人々との
さまざまなかかわりがとても興味深い。
とりわけ夫である作家の武田泰淳との、
残された一緒にいる時間の短さを予感するような
一見ぶっきらぼうだが、深い慈しみの情感が
こころにしみるのだった。

